蜜は甘いとは限らない。【完】
離れて3日目だけど、離れていた時間はすごく長く感じた。
...そろそろ葵から卒業しなきゃだな。
「あ、そうだ。葵ー」
「...何」
「ケータイ奪われたから、番号登録させて」
「奪われた?」
「うん」
ほら、と新しいケータイを見せてみれば葵の眉間に深い溝ができた。
そんなに怒らなくても。
「...ん、」
「ありがとう。
これであとはバレないようにするだけ、っと」
「...。」
赤外線のやり方は分かっているけど、面倒臭がりなあたしは葵に押し付けて戻ってきたケータイを眺めて微笑む。
...これでやっと葵とも連絡が取れるようになった。
「そういえば、なんで葵と離れさせたかったのに、指紋登録されてたんだ?」
自然と弧を描く自分の口を手で隠していると、絢梧が不思議そうな声を出した。
確かに。
会わせないようにここに住まわせて、ケータイも新しくさせて。
「なんでなんだろ」
「舞弥は知らないんだ?」
「うん、知らない。
山中が登録してあるのはあたしとあの人、葵だって言ってた」
「山中?あの人?」
「山中はあたしをここに連れてきた、あの人の犬よ。今はあたしの世話係。
あの人は、あたしの父親」