蜜は甘いとは限らない。【完】
キツく締め付けるように掴まれた襟を離すように、低い声で威嚇して睨む。
だけど、やっぱりこれは積み重ねてきた経験が違いすぎるからか、俺の睨みなんてなんとも思ってないように離してはくれない。
「...吐けや、早く」
「っ、」
「首、へし折られたいか?」
その言葉に、思わず目を見開く。
…舐めてかかっていい相手じゃないことくらい、自分で分かってるつもりだった。
でも、本当は分かっていなかった。
だから今、こんな状況になったんだ。
「...言、う。
言うから、はな、せ」
「...絶対に言うか?」
「あ、ぁ…」
どんどん頭に昇っていく血のせいで目が眩んで、限界だと思った瞬間。
やっと締め付けていた手が離れた。
「く、けほっ...」
「...腹の中身吐くんじゃねぇぞ?
そうじゃなくて、場所を吐け」
「っ、…分かってる」
もう少しで吐きそうだった俺の髪を掴んで、俯いていた顔を上に無理矢理上げさせられる。
俺の顔を見ている寺島の顔は、いつものあの様子からは信じられないくらい、恐ろしかった。
「…言うけど、1つ聞いて欲しいことがある。
というより、頼みたいことがある」
「あ?頼みだぁ?」
「...姉貴のことを、助けてくれ。
助けると約束してくれるのなら、教える」
「はぁ?」