蜜は甘いとは限らない。【完】




何言ってんだ、こいつ。




怪訝そうな顔を俺に向ける寺島は、声には出してはいないがそう言っているように見えた。





「…助けてくれるのなら、」

「助ける、とかどうでもいい」

「…あぁ?」

「どうでもいいって言ってんだよ」

「っざけんなよ、寺島ぁ!!」





平然とした様子で言った寺島に、思わず寺島の胸ぐらを掴む。


あんたには、あんたには俺らのことなんてどうでもいいかもしれない。


だけどっ





「てめぇは姉貴が好きなんじゃねぇのかよ?!」




バキっ



力いっぱい握り締めた拳が、寺島の端麗な顔に嫌な音を立てながら当たる。


久しぶりに思いっきり殴ったせいか、拳がじくじくと火傷したかのように熱い。




「...。」




髪を掴まれているせいもあり、そこまで勢い良く殴ることが出来なくて、寺島の顔は横に動いただけで終わった。




「……か?」

「あ?」




ゴキャっ



ガシャァァンっ




…一瞬、何が起きたのか分からなかった。



ふと気付けば、俺は外で倒れ込んでいた。





「言いたいことはそれだけか?クソガキ」




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