蜜は甘いとは限らない。【完】
「…なんていうか、若もヤキモチ妬くんだな」
「あれのどこがヤキモチよ。
そんなことより、あたしはあんなウザイ男がどう育ったのか不思議で仕方ないわ」
「(なんか、どっちもどっち)」
そんなことを思っているなんて知らないあたしは苛立ちのせいで、少し荒い手当てをする。
だけど顔を歪めるくせに何も言わないこの人はすごい。
あんな男なんかより、あたしはこういう人に惹かれるわ。
「...終わり。
残りの人も簡単だけど手当したから、運んであげて。まだ気絶してるし。
葵はそこ、座りな」
「え~」
「え~、じゃない」
なんであたしが仕事終わってからこんなことしなきゃいけないの。
元はといえば、ここに帰ってこなきゃいけなくなったのは...、
「あんたのせいなんだからね!」
「え、何が?」
「うるさい。
ここの片付け、1人でしなさいよ」
「うぇ...」
眉間に皺を寄せて心底嫌そうにする葵を睨む。
「説教だけじゃないの?」
「え、説教もされたいの?
じゃあ説教終わってから片付けね」
「あぁ、もう!するよ片付け!」
...あたしは今、よっぽど酷い顔をしていたのかしら。
ブツブツ言いながら片付けを始めるけどほんの少し、葵の顔色は悪い。