蜜は甘いとは限らない。【完】
「お嬢様、」
「…山中」
今日も1日何もすることがないだろうと思っていたあたしに、久しぶりに顔を見せた山中が目の前に来た。
「世話係なのに、あたしの側にあまり居ないのね」
「仕事が、詰まっていまして」
「あ、そ」
………_____。
「…なにか用?」
「…旦那様に、これを渡されまして」
立ち止まって動かないままの山中に聞けば、茶色の資料が入っていた時のような封筒を渡された。
「…これは?」
「目を、通しておけとのことです。
今日中に」
は、今日中?
遠目で見ていたよりも分厚い封筒に眉を顰める。
だけどとりあえずと思い、中を見る。
「!!…これ…」
「…では、私は仕事に戻ります」
「…。」
そっか、そうだったんだ…。
知らない間に、あたしと目からは涙が零れ落ちていた。
見ていた紙の文字は涙で見えにくくて、何度も拭いながら文字を読み進めていく。
声を掛けて部屋を出て行った山中の存在なんて、気付かないくらいに読み続けた。