蜜は甘いとは限らない。【完】




「お嬢様、目を通されましたか?」

「当たり前でしょ?」



朝、というより昼に起きたあたしは遅めの朝食を食べていた。

そんなあたしの前に、いつものような真っ白なスーツに身を包んだ山中が顔を出して言った。



「…それでは、行きましょうか」



…行こう、というのは渡された資料の中にあった、大事な将来のことを話す会議へということ。

そのためにあの大量な資料を昨日1日で読ませたのだ。



「…服はスーツ?」

「そう、ですね。
下はズボンで来い、とおっしゃっていました」

「了解」



確か、あったはず。


最後の朝食のパンを口に放り込んで、クローゼットの中身を思い出す。



「何時から?」

「あと2時間後です。
ですが、早めにと、」

「はいはい、分かってるから」



早めにと、の言葉の先を聞きたくなくて、自分の声で遮り部屋を出る。




< 209 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop