蜜は甘いとは限らない。【完】
「お嬢様、目を通されましたか?」
「当たり前でしょ?」
朝、というより昼に起きたあたしは遅めの朝食を食べていた。
そんなあたしの前に、いつものような真っ白なスーツに身を包んだ山中が顔を出して言った。
「…それでは、行きましょうか」
…行こう、というのは渡された資料の中にあった、大事な将来のことを話す会議へということ。
そのためにあの大量な資料を昨日1日で読ませたのだ。
「…服はスーツ?」
「そう、ですね。
下はズボンで来い、とおっしゃっていました」
「了解」
確か、あったはず。
最後の朝食のパンを口に放り込んで、クローゼットの中身を思い出す。
「何時から?」
「あと2時間後です。
ですが、早めにと、」
「はいはい、分かってるから」
早めにと、の言葉の先を聞きたくなくて、自分の声で遮り部屋を出る。