蜜は甘いとは限らない。【完】
「いてっ」
「いてっ、じゃない!!
こんな街のど真ん中で...。
希から電話が無かったら警察から電話が掛かってきたわよ?!」
「うるさいなぁ」
「...よし、分かった。
歯、食いしばりなさい」
「すみませんでした」
...なんだ、この茶番劇のような説教は...。
声が聞こえたと思えば隣にいた女はすでに男の前に行っていて。
遠慮なく平手打ちをする女に少し、興味を持ったのはこのとき。
てか、なんでこうなったんだ?
「おい、お前ら何してんだ」
「...すいません、若。
こいつからいつも街で暴れてる奴がいるって聞いて、少し話をと思ったら...」
「...喧嘩になったとでも?」
「「すいませんでした!!」」
「...はぁ」
牽制、とでも言いたいのだろうけど、いい迷惑だ。
結果、俺に連絡が回ってきてる時点でアウトだな。
2人の頭をとりあえず殴って、今もまだ騒いでいる男と女のところへ行き、頭を下げる。
「今回はすいません。
下の者が面倒なことをしたみたいで...」
「そうなんですか?
だけど、こちらにも非はあります。
ほら葵、謝りな」
「...いや」
「あ?」
「...すいませんでした」
声をかけた俺に顔を向けた女の顔は、一言で言うと綺麗。
ふっくらとした桜色の唇に薄茶のやわらかそうな髪。
...まぁ、性格には少し問題ありみたいだが。