蜜は甘いとは限らない。【完】
「えと、それでは帰っても?」
「…あぁ」
「では、」
ヤバ、少し見とれてた。
謝らせるだけ謝らせた葵という男の腕を引いて歩いて行く女の背中を、じっと追いかけるように見る。
.........この日から、なぜか組の奴は皆葵という男に絡みに行った。
あいつは街で結構いつも暴れまわっているらしく、それに顔もそこそこいいから、ということで有名みたいだ。
そんな何度問題を起こしても懲りずに暴れるこの男にも、止めれもしないのに止めようとする組の奴らにも呆れた。
それでも俺が何も言わなかったのは、後から騒ぎを聞きつけて現れる女に一目だけでも会いたかったから。
でも俺は女の名前を知らない。
あの男はそういうことを分かっていて、女の名前を呼ばないのだろうか。
...まぁ本当は調べれば直ぐに分かることなんだが、なんとなく、女の口から直接聞いてみたかっただけなのだけど。
「…葵、アンタは懲りるという言葉が分からないの?
そんなに殴られたい?」
「あ、姉貴ー。
だってこいつ等しつこいんだよ」
「そう、殴ればいいのね」
「うぇー...」
そして今日も、女は走ってきた。
今回は家の奴等は結構殴られていて、血だらけ。
しかも気絶。こんな子供に。
あぁ、情けない。
「...おい、車用意しろ」
「はい」