蜜は甘いとは限らない。【完】
その場でじっとこっちに歩いてくる舞弥を待つことが出来なくて、こっちに向かって手を振る舞弥の方へと走り出す。
早く、もっと早くっ……!!
「うあっ」
「っ」
舞弥の転がしていたキャリーバックが倒れるのも気にならないくらい、力いっぱい抱きしめる。
帰ってきた、やっと。
俺の腕の中に、居る。
久しぶりに抱きしめた体は仕事がハードだったのか、少し痩せていたけど舞弥の匂いだけは変わっていなかった。
「…拓哉、」
「ん?」
「……ただいま」
「…あぁ、おかえり」
それが嬉しくて首元に顔を埋めると、くすぐったそうに肩を縮めながらただいまと言った。
…柄にもなく、少し泣きそうになったのは自分の中だけの秘密だ。