蜜は甘いとは限らない。【完】




ていうか、出来ない。



おむつを変えるのにも時間がかかるし、抱っこしようとして落としそうになったこともある。



変に笑おうとして不気味な笑顔になったとき、瑞輝は恐ろしく泣いた。



あ、子供の名前はね。




寺島 瑞輝(てらじまみずき)




あたしたちにとっての光になって欲しいからと付けた名前。



実際あたしにはなってるんだけど、拓哉はどうもそれがわからないらしい。




「…ねぇ、あたし喧嘩疲れた、休憩」

「…同感、俺も」




毎日起こるこの喧嘩は、いつも瑞輝が寝てから始まる。


少しずつしか寝ない瑞輝を寝かせている時間だけしか、あたしたちに時間はない。


いや、正確にいうとあたしの時間はない。




「…まぁ、なんだ、」

「……何」

「…お疲れ様」

「…ありがと」




…でも、喧嘩のあとに疲れて座り込むあたしを抱きしめて頭を撫でてくれる拓哉が居るから、今まで頑張ってこれたのかもしれない。





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