蜜は甘いとは限らない。【完】
「え?!」
すんなりと頷いた女に驚いた。
え、は?
そんなに簡単に頷いてもいいものなのか?
「ま、待って姉貴。
こいつ等の家がどんなのか分かって頷いて...」
「分かってるわよ。
この人たちの服を見れば、嫌でも」
「...なら、なんで?」
「あんたのために走るのは疲れたし、面倒くさいのよ」
「それに関しては、ごめん。
でもっ」
...簡単に頷いた女に不満げなこの男は、正しい。
この世界に片足突っ込んでいるだけはある。
そう、簡単に言ったものの、俺達の世界はそんなに甘くない。
下手すれば、巻き込まれて死ぬときもある。
「...あんたは、もう少しこの世界の怖さを知ったほうがいい。
片足を突っ込んでいるのなら、お世話になって教えてもらいな」
「...姉貴よりは知ってるつもりなんだけど。
それに俺強いし」
「いや、知らないわ。
あたしなんかより、ずっと。
それに、あたしより弱いわ。葵は」
...?
そう言い切った女の様子は、少し、雰囲気が違ったような気がした。