蜜は甘いとは限らない。【完】
ジジイとはさっきあたしに資料を渡してきた先輩のこと。
ただでさえ面倒くさがりのあたしは自分の仕事だけで疲れるのに、あたしにすぐ新しい仕事を持ってくる。
自分も忙しいのかもしれないけど、あたしだって忙しいのにお茶淹れて来いとか頼むし。
だからコピーなんて、毎回あたしがしているようなものだ。
…本当、ふざけんじゃないわよ。
「ハァ…」
持ってきたたくさんの資料を見て、まだ机の上に積み重ねられている資料を思い出し、何度目かも分からない溜め息を零す。
「まぁまぁ、そんなに苛ついてると、また失敗するぞ?」
「…希、」
「ん?」
唸り声を上げながら動くコピー機を睨みつけていると、希があたしの背中を軽く叩いた。
加賀 希(かがのぞむ)
あたしの同期で高校から一緒。
この社内で一番仲がいいと言っても良いくらいの一緒に居る。
「あたしがそう毎回失敗すると思う?」
「思う。
って、あ!!」
「ん?
あ!!!」