蜜は甘いとは限らない。【完】
その人が綺麗好きだったからか、あたしがいた時より綺麗だ。
「あ、舞弥ー」
「稀浬、」
「ごめんな、仕事中だっただろ?」
「いいわよ。
原因は問題を起こした葵なんだから」
そういえばヘラヘラと笑うこの男の名前は、
夏芽 稀浬(なつめきり)
あたしと同い年で、さっき言ったこの学校の校長。
甘い顔を隠すようにかけられた黒縁の細い眼鏡に、昔は金だった癖毛の髪を染めて今では茶色の髪。
...全く傷んでない髪は今もふわふわそうだ。
「本当、葵があんなに暴れる奴だなんて思わなかったよ。
ま、そっくりだけど...ぶふっ」
「それ以上言うともぐぞ?」
「何を?!」
ひどい、冷たいー。ドライアイスー。
そう言って泣くふりをするこいつも今も昔と変わらずウザさ全開だ。
「はぁ、それで?相手はなんて?」
「ため息?!
それがね、もう謝るだけでいいってー、こっちも悪いんだろうからって」
「そう」