蜜は甘いとは限らない。【完】
「いっぺん死んでこい」
「え゛、なんで?!」
「なんとなく」
一発だけ稀浬に回し蹴りを食らわしたあたしは、宛もなく校内を歩き始める。
ぶらぶらしているとまだ下校してない生徒が少し居て、堂々とスーツ姿で歩くあたしをモノ不思議そうに見ていた。
...あたしも、もう名前も落ちちゃったかー。
昔はあたし、有名だったんだけど。
そのおかげかそこまで気にならない視線を浴びながら歩いていると、女の子を見つけた。
あの子にでも聞けばわかるかな。
なんて、半信半疑で肩を叩く。
「ちょっとごめん」
「あ、はいっ(綺麗な人だなぁ...)」
「、?
あのさ、瀬崎葵。見なかった?」
「え...?」
少し抜けたような声と共に振り返った女の子は後ろ姿で見て思ったよりも可愛くて、一瞬止まってしまった。
でもそれに気付かれないように直ぐに話をすると固まられた。なんで。
「えっと...おーい?」
「...。」
固まったまま動かなくなってしまった女の子の前で手を左右に振る。
「?」
ふと周りも静かなことに気付いて後ろを振り向くと、少しだけ居た生徒みんなもあたしを見ていた。