蜜は甘いとは限らない。【完】
母校ということもあって、この学校をよく知っているあたしはすんなりと階段にたどり着いて、屋上まで階段を登った。
…まぁそこでよくサボってたから屋上までの道は1番覚えてるんだけど。
少し錆び付いた屋上に続くドアを開けると、冷たい風が隙間から吹きでてきた。
「うぅ、寒っ」
「...姉貴?」
その風のせいで思わず出た言葉に、言っていた通り屋上にいたらしい葵が反応する。
「葵、あんたは何回問題起こすわけ?」
「あは、連絡いったんだ」
「当たり前でしょ」
バレちゃったかー、なんて言って屈託のない笑顔をあたしに向ける。
...これはまだ懲りてないな...。
「葵、治療費払うの大変だって、分かってるわよね?」
「うん」
「...ならなんで?」
「だって俺がどんなに拒否しても向こうから殴りかかってくるんだよ?
黙って殴られろって?」
「それは...」
あたしだって、黙ってられないけど。
でも葵は加減を知らなさすぎる。
お金だって大変だけど、それよりも人の脆さを知らないと...。
「取りあえず、謝りにいくよ」
「んー」
「...ちょっと稀浬に電話するから、待って」
「分かった」
葵が頷いたのを確認して、電話をかける。