蜜は甘いとは限らない。【完】
「姉貴、慌てすぎ」
「だって寒いし」
「ふは、可愛い」
「からかうな、馬鹿!」
『すいません、病院内では騒がないでください』
そんな手を握ったり開いたりして感覚を戻していると、またあたしをからかう葵に少し怒鳴ってしまった。
しかもその怒鳴り声のせいで看護師さんにスピーカー使って怒られるし。
...葵のせいだ。
「...行くよ、葵」
「くはっ、うん」
「...。」
「いたっ...ごめんって」
恥ずかしくなって顔が赤くなったあたしを笑う葵の足を踏み付ける。
それが結構痛かったのか、涙目になって前を歩くあたしに付いてきた。
...ざまあみろ。
これで少しは大人しくなればいいのに。
「...ここ、」
「あ、ここなの?」
「あんた相手の名前知らないの?」
呆れた。
悪いこと1つもしてない、というように平然とする葵はドアに手を添えた。
まさか。
「もちろん。
ま、とりあえず入るよ。
失礼しまーす」
「ちょっ」
そのまま手を横に動かし、スライド式のドアを飄々と開ける。
オイ!まだ心の準備が...!!
「?姉貴?」
「...失礼します」