蜜は甘いとは限らない。【完】
「姉貴、こいつ女じゃなくて男。
ね、お母さん?」
「え...あ、はい。
私の、正真正銘息子です」
よく、女の子と間違えられるんですけど。
そう言って女の子...いや、男の子の頭を撫でる。
でも、どこからどう見ても女の子。
しかも超絶美少女。
信じられないあたしはもう一度ドアのところに戻って名札を見る。
如月 悠(きさらぎゆう)
...うーん。
男とも女とも取れる名前。
「そ、そんなに疑わなくても男ですよ」
「あ、すいません」
「ちょ、姉貴失礼...ふはっ」
苦笑する如月さんに頭を下げると、葵に笑われた。
...よーし、葵死刑。
笑いを堪えられない葵の悶える姿を見て決めた。
と、そうじゃなくて。
「...あの今回は本当、すいませんでした」
「...いいんですよ。
この子もきっと、悪かったんでしょう?」
「っそれでも!
...ほら、葵」
「…うん」
「本当、申し訳ございませんでしたっ」
全然、気にしてませんから。
下げていた頭を上げると、自分の両手を顔の前で振り否定する如月さんに、胸が痛んだ。
もう一度、葵と頭を下げて如月さんの顔を見ないようにして病室を出る。
...あれ以上あそこにいたって、如月さんを苦しめるだけだと思ったから。