蜜は甘いとは限らない。【完】



女のような甘い顔を歪めて俺に殴りかかってくるこいつの拳を軽くいなし、背中に裏拳を食らわす。


...チッ、大した手応えがなかった。




思った通り、少し体が飛んだだけで直ぐに体制を立て直してきた。




「はっ、それで終わりかよ?!」




話で聞いたほど強くねぇのな、お前。


そう言ってニヤリ口元を歪めるこいつは、知らないのだろうか。



...俺が暴れ出したら、止まらないことを。
相手が気絶しても、気が済むまで殴り続けることを。





「...すたーと」

「あ?何か言った...か...」





だんだん気分が乗ってきた俺は喧嘩が楽しくなってきて、相手よりも口元を歪め、呟く。





地獄ゲームの始まりを。





「や、めろ!!」




ドゴッ



喚く、声が聞こえる。




手がジンジンと熱くなっていく度、周りの悲鳴は大きくなり、反れに比例するように相手の声はどんどん小さくなる。





「はは、あははっ」

「せ...ざき、わるか...」

「何が?
自分から言ってきたんだから、最後まで楽しもうよ?」





勝者の決まったゲームを。





ボキィっ...




...ポタ...ポタ...




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