蜜は甘いとは限らない。【完】




“醜い手は、綺麗なものを救えるの。

でもね、綺麗なものは醜いものを救ってはくれない。
だからね、醜いものは本当は醜くないの。

本当に醜いのは、ただの正義面をした偽善者よ。”





そう言って、涙した姉貴の顔を、今でも覚えている。




昔、と言ったのは訂正。

数年前に、姉貴が言っていたことだから。




その日から姉貴は変わった。

長かった髪をバッサリ切り、あまり笑わなくなった。




笑うことを忘れたわけじゃない。

ただ、少し昔とは違う笑い方をする。




俺がそれを変えてやりたいのだけれど、それはどうも叶わないものだと悟った。




変えれるのは、姉貴がこれだと決めた相手。




キュっ




未だに冷たい水が流れ出ている蛇口をひねり、流れ出るのを止める。




トイレを出てみれば、廊下には人人人。



...あぁ、俺が殴った奴が中心にいるのか。


結局、やりすぎた方が悪いのかよ。



溜め息をつくと、それで俺に気付いたらしい近くにいた生徒が真ん中までの道を開けていった。

うざ。


そんなこと、いちいちしてくれと頼んだ覚えは無いのに。




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