蜜は甘いとは限らない。【完】
ガコンっ
稀浬さんに伝えたように外にある自販機で温いお茶を買った俺は、それで手を温めていた。
冷えていた手はそのお茶で温める。
手が温もっていくけど、外の空気は冷えていたから少し熱くなっいた頭が冷えた。
...俺って、結局何がしたいんだろう。
本当は分かってるのに。
このことが姉貴にも悪影響を与えていて、姉貴の存在を知っている奴がああやって変な噂を作り始めることを。
「今回のも、姉貴に連絡行くんだろうな」
...また、俺は姉貴に迷惑しかかけない。
謝るのが嫌いな姉貴に頭を下げさせて。
...俺が守りたいものは、なんなんだろう。
温(ぬる)くなったお茶を強く握りしめる。
だいぶ温まった手は元の白さに戻っていて、動きにくかったのも治った。
...俺のこの手は醜いだけ。
姉貴が言ったように、醜い手でも助けることはできない。
ただ、破壊することしかできない。
...こんな俺を、姉貴は捨てないかな。
ふっと自嘲の笑みを浮かべて屋上に向かった。