蜜は甘いとは限らない。【完】
そして言われたようにポケットに手を入れた。
...うん、まだましかな。
「じゃあ、行くよ」
「OK」
珍しくあたしがちゃんと乗ったのを確認した葵に頷くと、バイクを唸らせて動き始めた。
「さーむーいー!!」
「我慢!!」
やっぱり寒いことに変わりないから、メット越しに叫ぶと葵に笑われた。
「おかえりなさい、姐さん。葵」
「ただいま。ほら姉貴降りて」
「...。」
...あのまま叫び続けたあたしは家に着いたときには疲れ果てていた。
くそ、これからは車だ。
バイク好きだけど、運転するのも楽しいけど寒い!!
ブツブツ言いながらメットを脱いで葵に渡すと、軽くジャンプをして降りた。
クスクスと笑い声が葵と家の人たちから聞こえるけど、無視して家の中に入る。
家に入ってすぐに、寺島が居た。
「...おかえり」
「ただいま、仕事は?」
「まだだ、」
...仕事終わってないんだったら、戻ればいいのに。
なぜかあたしの前でモジモジしている寺島。え、キモイ。
「何、言いたいことがあるならはっきり言って」
そんな寺島に中に入ることを拒まれているあたしはだんだん腹が立ってきた。