蜜は甘いとは限らない。【完】
拓哉side
あいつの意味の分からない置き手紙を、勝手に帰ったらしいあいつを送った奴から貰った。
それは葵もらしく、貰った手紙に目を通すとくしゃくしゃに丸めてポケットにしまった。
なんだろうと思い俺も紙を開く。
目を通してすぐ、紙を持つ手に力が入る。
暫くここに来れない...?
ぐっと眉間に皺が寄ったのが、自分でもわかる。
「若、姐さんなんて?」
「...暫く、ここには来れないそうだ」
「そう、ですか」
そう言った全員が同じ顔をして残念がる。
まぁ、こいつらなんだかんだ懐いてたし。
それに飯も不味くはないからな。
「なら、これは味わって食べなきゃだな」
「だな。
いつもがっつくだけがっついてるから」
そんな会話を聞いて、自分の目の前に並べられた飯を見る。
白い湯気が出ている自分の好物。
...なんで、手紙だけ残していくんだよ。
手紙を置いて、ハンバーグを口に放り込む。
「...美味い」
その時だけ、いつもは素直になれない自分の口から素直な言葉がでた。