蜜は甘いとは限らない。【完】
それから直ぐに用意された車に、2人で乗り込む。
「...初めてお前を車に乗せたときみたいだな」
「嬉しくない言葉をどうも」
「...お前ら本当、姉弟でそっくりだな」
それだけ話した俺は車に乗って直ぐに外をじっと見つめる。
葵はあの時よりは成長したのだろうか。
「...褒めてるの、それ」
「いや、貶してるつもりだ」
「あ、そ」
...やっぱり成長したように見えるのは身長だけだな。どんどん伸びていく。
成長期は恐ろしい。
「若、着きましたよ」
車に乗っている間、ずっとぼーっと外を見ていた俺は声をかけられて着いたことに気がついた。
「...悪い。また連絡する」
「分かりました」
葵がもうすでに降りていたから自分も少し急いで降りて、運転をしていた奴に一声かけて葵を追いかける。
「あお...、」
「...ねぇ、瀬崎舞弥ってどこにいるか分かる?」
「え、は、はい!」
“葵、行くぞ”
そう言いたかった俺は口を開けたまま目の前で繰り広げられる、葵の手馴れた会話に驚いた。