蜜は甘いとは限らない。【完】




“家族”





その言葉がこんなに歪んで聞こえたのは、幻聴?





「...そう。
なら、あの寺島という男にはなんて説明するつもり?」

「ただの過労だって言えばいいだろ」

「まぁ...それでもいいかもしれないけど」





自信たっぷりに言うんだから、あの男を上手く騙せる。ということなのか?




...俺には、あの男に嘘なんて通用しないように思えたけど。





「...それじゃあ、呼んでくるね」

「あぁ、頼む」





チラッと舞弥を見てから葵くんは男を呼びに部屋の外に出ていった。




...舞弥は、



舞弥は、あの男と出会って変わったのか?

舞弥は、あの男をどう思ってる?




目を覚まさない舞弥にやるせない気持ちになる。

聞きたいことはたくさんある。




ただ、今は。

自分の中の気持ちを整理すべきなのかもしれない。



俺は最後に舞弥の頬を撫でて2人が帰ってくるのを待った。




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