蜜は甘いとは限らない。【完】
舞弥side
「……だろ」
「……から、……?」
ん…誰?
薄く目を開いて見えたのは真っ黒な天井。
そんな真っ暗な天井に細く電気の光が指していたから、今はもう夜かな。
その光が漏れている部屋の方に向かえば、声が聞こえてきた。
「……だから、寺島さん関係ないって」
「は?何が関係ないんだよ」
その部屋の少し開いた襖に近づくと、さっきよりははっきり聞こえた声に耳をすます。
…この声は、葵と寺島?
てことは、倒れたあたしを2人が運んでくれたのか。
声と、見覚えのある天井で大体の自分の現状を把握する。
あたしの体も、弱くなったなぁ。
こんなに簡単に、倒れるつもりなかったのに。
それに寝すぎた。
「...姉貴、起きてるんだろ?
出てきていいよ」
「...うん」
やっぱり気配を消さずに聞いてたら、駄目か。
直ぐに気付いた葵の声で2人の前に襖を開けて顔を出す。
「…やっと目が覚めたかよ、チビ」
「あたし女の中では背、高い方なんだけど」
「はっ、それでか」
「いいから、姉貴は大人しくしてて。
寺島さんは五月蝿い」
すっかり調子を戻している寺島と、そんな寺島を抑える葵。
どっちが年上なのやら。
...まぁ、あたしもなのだけれど。