蜜は甘いとは限らない。【完】




「…あぁ、あいつか」





あたしの言葉でそれにあたる人に覚えがあったのか、何かを思い出したかのように顎に手をやる。


希、名前すら教えなかったんだ。





「あたしはただ、口止めしただけよ。希にはしてないけど」

「何て、言ったのかを聞いてる。
てか、は?あいつには言ってないのかよ」

「普通に話すなって言っただけよ。
うん、希には何も言ってないわ」





ただでさえイライラしているあたしにしつこく聞いてくる寺島を殴りたい。
うっとおしすぎる。



そんなにあたしを詮索してどうするの?



あたしのことなんて、





「あんたには、関係ないでしょ?」




おやすみ。



その言葉の先を聞かずに足早に部屋を出る。




…今日は自分のアパートに戻ろう。




後ろから聞こえるあたしを呼ぶ怒鳴り声を無視して、早歩きというより小走りでアパートに戻った。



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