蜜は甘いとは限らない。【完】
…それに、また倒れてこれ以上寺島に探られるのは、ごめんだ。
有給は明日からのあたしは今日の仕事が終わらせ、今は服を買いに来ていた。
「こちらはどうですか?」
「…もう少し、地味でいいわ。
あたしに似合うようなの、ないの?」
「どれもお似合いですよ、これなど...」
「お世辞はいいから、早く」
「…はい」
高い物だけを出してどれも似合うなんて言われても、買う気なんて湧いてこないわよ。
あたしの冷たい言葉にやっとまともに探す気になったのか、今まで出してきていた赤やピンクを仕舞って、青や黒のドレスを持ってきた。
「こちらならどうですか?
背中が少し広く開いてますが動きやすいですし、体のラインもよく出て上品な作りになってます」
これなら、瀬崎様にもよくお似合いです。
そう言って出してきたのは、青のロングドレス。
胸のところも背中のところも大きく開いていて、脇腹の辺りから腰まで、大きめのラメが散りばめられてる。
値段もそこそこだし、うん。
これに決めた。
「これにするわ」
「かしこまりました。
そのまま着て行かれますか?」
「ええ、」
頷いたあたしを見て、直ぐに着れるように用意した服を持ち、あたしを試着室に連れて行く。
「では、着替え終わりましたらお呼びください」
「分かったわ」
返事をして直ぐにカーテンを閉め、スーツを脱ぎ捨てる。
スーツの締め付けが無くなった体に、ドレスを着る。