蜜は甘いとは限らない。【完】
「…まぁ、まだマシかな」
着替え終わって試着室の中にある全身鏡で自分の姿を見る。
別に自分の容姿がそこまで不細工な部類に入らないことは、分かってるから多少派手めでもいいか。
まぁ、ちょっと寒いのが嫌だけど。
「お着替え終わりましたか?」
「ええ、」
「では、お服はこちらにお預かりします」
「よろしく」
ポツリ、呟いた声に気付いた店員があたしに一言問いかけ、返事をすればカーテンが開いた。
試着室から出て脱いだ服は店員に渡し、袋に入れてもらった。
「ありがとうございました」
深々と頭を下げている店員を横目に、お店を出て呼んでいたタクシーに乗る。
「どこまでですか?」
「…嵐川コーポレーションまで、」
「分かりました」