蜜は甘いとは限らない。【完】
決心
舞弥side
「…着きました」
「ありがとう」
ラジオすらかかっていないタクシーは面白みが無くて、暇なあたしは外をじっと眺めていた。
そのおかげで着いたことに直ぐ気付き、ピッタリのお金を払い降りる。
…肩が凝った。
長時間、同じ体勢でいるのは少し辛い。
「お嬢様。
いらっしゃいましたか」
「…あの人は、」
「もう、会場内でお待ちになっています」
お荷物は、こちらへ。
首をぐるりと1回しし、馬鹿デカいビルに足を運ぶと、真っ白なスーツを着た男に呼び止められる。
あたしを、よく知ったこの男はあの人の“犬”だ。
簡単に言えばだけど。
そんな人がご丁寧に荷物を入れるカゴを持ってきたから、そのカゴの中に服の入った袋を入れる。
「では、このブローチをお付け下さい。
付けていないと、ここを出されてしまうことがありますので」
「…分かったわ」