蜜は甘いとは限らない。【完】
ピンクの小さな花を主張としたブローチ。
それをドレスの胸のところに付ける。
「お付けになられましたか?
それではお寒いでしょうから、中へ」
パチンと音がして付いたブローチを見て、何処から持ってきたのか薄手のストールをあたしの肩にかける。
いや、あんたがこのクソ寒い中外に引き止めてたんでしょう?
軽く肩に触れた手を払いのけ、ビルの中に入る。
ビルの中は暖かく、寒さのせいで入っていた肩の力を抜く。
「あら、舞弥様。
お久しぶりでございます」
「えぇ、お久しぶりです。吉乃様」
「相変わらず、お綺麗ですのね。
羨ましいですわ」
「ふふっお上手ですね」
…本当、演技がお上手。
思ってもないことを、ベラベラと話すし。
それに表情なんて、よく見ないと分からないのだから。
あの、全く笑ってない目も。ね。