惚れてます、完全に。[短編]
次の日、午前10時前。
最寄り駅の改札前で、俺は夏実のことを待っていた。
「流ちゃあーん!」
駅に響く、元気有り余ってますって感じの声。
ぶんぶんと手を振りながら、駆け寄ってくる。
…ったく…
「少しは人目も考えろっ。」
デートが始まって早速、俺は夏実を叱った。
「だって…楽しみだったんだもん!」
にっこりと、悪びれもなく笑ってみせる夏実。
可愛い…って、夏実のペースにハマるなよ、俺!
そうだよ、こいつはとんでもなく破天荒なんたから…。
「ほら、行くぞ。」
平静を装い、先に歩き出した俺の横に、夏実は慌てて並んだ。