惚れてます、完全に。[短編]
「…流ちゃん、ずるい…。」
夏実らしくない、か細い声。
真っ赤になった頬を隠すように俯いたまま…
俺の服の裾を、片手でギュッと掴んだ。
「…っ……………。」
なんだこの行動。
全然予想してなかった。
…夏実を照れさせるはずなのに、今めっちゃドキっとした…。
あーもう、どんだけ惚れさせたら気が済むんだ?
…いや、惚れさせてる自覚ないんだから、気が済む以前の問題か。
だとしたら俺、どれだけ平静を装えるだろう…
服の裾を掴まれたまま、俺はそんなことを次から次へと考えていた。