俺と無表情女の多表情恋愛
そんな(一方的に)気まずい状況の中、ついに今まで黙認してた友達までもが動き出した。
それは、部活でストレッチをしているときのこと。
「准ってさー、桐生と付き合ってんの?」
いつか来るかもと内心思っていた質問。
俺以外の男子と喋ってる桐生を見たことがないから、まぁ当然の考えかなって思うけど…。
「付き合ってないし」
「え、そうなの?てっきり付き合ってるのかと」
わいわいと盛り上がる周りを見て、軽く息を吐く。
俺だって桐生と付き合いたい。
というか、付き合ってたらあのことでこんなに悶々としてねーし。
そんな俺の憂鬱を余所に、さらに盛り上がっていた。
「でもまぁ、俺だったらあんな無表情女嫌だな」
「確かに!あんなのと付き合っても楽しくなさそうだしな!」
「ほんっと、顔だけは良いのになー。残念だわ」
笑いながらのその言葉にイライラしてくる。
おまえら、桐生の何を知ってそういうこと言ってんだよ。
桐生のことを知ってる男子は俺だけで良いとかって思う反面、桐生のことを知らない男子に腹がたった。
「桐生のこと、悪く言うのやめろよ。あいつ分かりやすいぞ。一緒にいて楽しいし」
「ちょ、マジになんなって!」
「てか、准おまえ無表情女にマジなわけ?」
俺が怒ってることを察して、今度は俺に白羽の矢がたった。
「……悪い?」
「え、まじかよ………」
今まで騒いでたのが嘘みたいに静まりかえる。
呆気にとられている奴らを置いて、俺はストレッチを切り上げて走りに行くことにした。