俺と無表情女の多表情恋愛
今日も何事もなく1日が終わる……予定だったのに、先生の一言でそれは覆された。
「今度の体育祭の委員なんだが、俺の推薦ってことで、桐生と槙島にお願いしようと思う」
「はっ!?」
めんどくさい役から逃れられたクラスメイト達は俺らに盛大な拍手を贈ってくる。
委員とか聞いてねーし。
ちらりと桐生を見てみるけれど、相変わらずピクリとも表情を変えていない。
文句ぐらい言っても良いんじゃないかと思いつつも、先生の押し付けぶりはいつものこと(桐生にプリント届けるときもそうだったし)だと諦めて受け入れるしかなかった。
放課後になって、役員の説明で呼び出される。
内容は簡単に言えば、ルールやらの説明と、クラスごとに作る弾幕の規定だった。
「買い物はおまえら頼むわ。俺忙しいから」
弾幕作りに必要な材料は、毎年学校側が用意してくれている。
そして、今年の買い物担当になってしまった先生はそのとてつもなく面倒な買い物を俺ら2人に押し付けてきた。
「は、嫌ですよ面倒くさい」
「領収書さえ貰えれば金はちゃんと払うし、ほら、今度飲み物でも奢ってやるから。な?」
なんとしてでも俺らに行かせたいらしい。
どれだけめんどくさがりなんだと呆れていると、桐生は「それなら…」と頷いていた。
………飲み物ぐらいで釣られるなよ。
どことなく嬉しそう(に見える)桐生をついつい二度見してしまう。
桐生の言葉を聞いた先生は悪い笑顔を浮かべて耳打ちしてきた。
「ほら、桐生1人で買い物行かせるのか?女だけだと荷物重いし辛いだろうなー」
ぐちぐちと囁き続ける先生に、ついに俺は折れるしかなかった。
桐生と2人っきりで買い物とか、(一方的に)気まずすぎる。
こんな風になるならあの時なんで我慢出来なかったんだ俺。
猛烈に過去の自分を殴りたくなった。