俺と無表情女の多表情恋愛


「……まだ?」

「っ!も、もうちょい」


声にはっとして急いで結びつける。
赤いリボンのように髪に結んだそれは、桐生にとても映えていて、俺は満足げに腰を上げた。


「ありがとう」

結んだ鉢巻きを触りながらそう言った桐生。
その顔はどことなく満足げ…というか、嬉しそうで、見ててつい笑顔がこぼれた。


「……そういえば、槙島くんは何に出るの?」


その言葉を聞いた瞬間、俺の息が一瞬止まった。

え、だって、あの桐生が俺のことを聞いてきて…
んで、槙島くんって……

初めて桐生に名前呼ばれたんだけど!


ついてんぱってしまう。ので、それがばれないように必死で繕う。


「あー、俺は…バスケとパン食い」

「そう」


「お互い頑張ろうね」だなんて爽やかに言い残して去って行った桐生。


どれだけ振り回されればいいんだ。ほんとに。
桐生がさっきまで座っていたところにしゃがみ、頭をかく。

頭の中に蘇るのは、桐生の唇の柔らかさだったり、不意に見せた表情だったり。


「……あぁ、もう」

限界かもしれない。


時が経てば経つほど膨らんでいくこの気持ちと罪悪感。


「准、もうすぐ出番だぞーー」

「准!?どこだじゅーんーーー!!!」

「今行くー」


やたらうるさいはまこの声に返事をする。
そして、決意とともに立ち上がった。


いまからやるのは、バスケの試合。
もしこれで俺らが優勝できたら。

そしたら…………。




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