俺と無表情女の多表情恋愛
この学校の体育祭にはすべての競技を通して、基本的なルールがいくつかある。
そのひとつは、リレー以外の種目の、対象部活在部者の出場を禁止する、というものだ。
要するに、野球部は野球、サッカー部はサッカー、んで、バスケ部はバスケに出場出来ない。
当然俺の出るバスケにもバスケ部出身はいない……はずだったんだけどな。
順調に勝ち進めて来た俺らは、いつの間にか準決勝まで来ていた。
チームのメンツは浜子含めたいつもの部活メン。
他の奴らとやるよりは息合うからなのか、優勝候補の1つとなっていた。
で、今から対戦する相手の強みは、地元のチームで今もバスケを続けている遠藤。
部活に入ってないってことで、バスケ参加が認められた、バスケでのダークホースらしい(と浜子が言っていた)
笛の音に反応してボールが上がる。
先にボールを取ったのは俺らのチームで、声をかけあってボールを回すもすぐに遠藤にカットされてしまう。
どうにかしないとと思っているうちに差は開き、かなりの点数差がついたまま前半戦が終わってしまった。
「やっぱ強ぇーな、遠藤」
「後半巻き返せるかなー」
「頑張るしかないって!みんなで気合入れて頑張ろうぜっ!!」
浜子がこぶしを握るも、かなり疲れてる俺らは脱力気味。
やっぱまだ告るのやめておこうか…。
そんな思いがかすめたとき、あっ!と浜子が大声を上げた。
「なんだよ浜子。さっきからうるさいぞ」
「准!見てみろよあそこ!」
指さした方向を見ると、そこには赤い鉢巻きを揺らして立っている桐生。
しばらく目線をさまよわせていたかと思うと、目が合った瞬間、口を動かした。
「な、なぁ准。今無表情女……」
「…うるさい、浜子」
ぐるり、と向きを変え、チームへと戻る。
「おまえらー、後半で巻き返すぞー!」
いきなりやる気になった俺を不思議がりながらも、「おう!」と反応を返してくれる。
桐生に頑張れ、だなんて言われたら、頑張らないわけにはいかないもんな。
首にかけていたタオルを置くと、笛の音につられてコートへと向かっていっった。
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