無口な上司の甘い罠
呆気にとられる私の横で、峰子はその指輪をはめた。


…ピッタリだった。


「・・・ほらね?瀬名君とケンカして、

その腹いせに、この指輪を、貴女にあげたのね。

もう、やんなっちゃうわ」


「・・・」


「…とにかくこれは返してもらうから。

それから瀬名君の伝言は伝えたわ。

待ってても、ここに彼は現れない・・・わかった?」


そう言い捨てて、峰子は指輪をしたまま去っていく。


ハッと我に返った私は、峰子を追いかけた。

その指輪は、峰子の物じゃない。…私の指輪!


外に止まっていたタクシーに乗ろうとする峰子に追いついた私は言った。

「返して!それは私の大事な指輪なんだから」


「しつこい!」

・・・・・・。


押し倒された私を置いて、峰子は逃げるようにタクシーに乗ると、

走って行ってしまった。


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