無口な上司の甘い罠

★…ただ、そばにいて欲しい

…何かが、髪に触れて目が覚めた。

ぼんやりする視界の中に、部長の姿が映し出される。

…確かここは、隆盛の部屋。

こんな所に、部長がいるはずない。
…そうか、私はまだ寝てるんだ、これは夢の中。

「…今日子」

「…⁈」

耳にハッキリ聞こえる、部長の声に、目を見開いた。
ガバッと起き上がり、部長から少しはなれる。

…その行動に、部長は悲しげに顔を歪めた。

「…俺の傍にいるのはそんなに嫌か?」

「…」

嫌なわけない。今すぐその広い胸に飛び込みたい。でも、出来ない。

大事な指輪は取られるし、…何より、部長はやっぱり、峰子さんと結婚するんでしょ?

私と交わした約束は、嘘なんだよね?
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