無口な上司の甘い罠
「あ、いらっしゃい、また二人で来たんだ」

そう言ってニコニコ会釈したのは、

前に来たバー。

亮太さん、その人だった。


「お久しぶりです…て言っても、この前からそんなに経ってないか」

そう言って笑うと、亮太さんもハハッと笑った。


・・・宮本部長は、自分の左側に私に大事なメガネを置いた。

そこに置かれたら、取るに取れない。

私は観念して、宮本部長の隣に座った。


「今日子ちゃん何飲む?」

「・・・宮本部長と同じ奴」

「…え、マジで言ってんの?」

「・・・??」

宮本部長がいつも何を呑んでいるのかなんて、私は知らない。

・・頼んだはいいが、いざ飲んでみると、


「…美味しい」

「…今日子ちゃんって、いける口なんだね?」

「・・・?」


・・・その時は、まだ意味が分からなかった。

30歳にして、お酒はよく飲んでいたが、いつも同じものばかり。

…まさか、そのお酒のアルコール度数が、めちゃくちゃ高いなんて、

知るはずはなかった・・・
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