無口な上司の甘い罠
「これから社に戻って、今後の打ち合わせだ」

「はい…キャ!」

・・・・・・。

事もあろうに、階段でつまずいた私。

でも、ギリギリのところで、宮本部長に助けられた。


「あ・・・ありがとうございます」

慌てて宮本部長から離れようとしたが、それは許されなかった。


「今夜、仕事が終わったらいつものバーに付き合ってもらうからな」

片手で私を抱きしめたままの宮本部長が、私の耳元で囁いた。

真っ赤になった耳。

それを見た宮本部長はクスリと笑う。

でもすぐに私を放し、サッサと歩き出してしまった。

…周りの視線を痛いくらいに感じながら、私は急いで宮本部長の後を追った。




・・・宮本部長の声が、耳から離れない。

まるで呪文のように、何度も何度も、聞こえてくる。

その度に、ドキドキして、宮本部長の事で頭が一杯になっていた。
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