無口な上司の甘い罠
「…可愛いな」

部長はそう言って目を細める。

私は恥ずかしくて、目線を泳がせる。

…この人と一緒にいると、なぜか素直な気持ちになってしまう。


目線を逸らした私の顔を、自分の方に向け、

言い聞かせるように言った。


「帰ってきたら、いくらでも可愛がってやるから、

それまで、男にはくれぐれも注意しろよ?・・・いいな?」


「・・・・」

気を抜くと、前のような事件に遭いかねない。

私は部長の目を見て、小さく頷いて見せた。


それに納得した部長は、シャワーだけ浴び、着替えを済ませると、

サッサと、家を出ていった。


…それから、数時間後。

…部長はちゃんと飛行機に乗れたんだろうか?

会社に行く途中、その報告メールが届いた。


『乗り遅れた』

そのメールを見て慌てて電話する。


「ちょっと部長、何やってるんですか?」

その言葉の後、部長は何も言わない。
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