無口な上司の甘い罠
「今日子って、意外と料理美味いんだな」

「…意外は余計です」

…そう言ってふて腐れる私を見て瀬名はクスクスと笑っている。

…だってそんなこと言われたら、なんだか腹立つじゃない?

これくらいの料理ならできるし、もう少し手の込んだ料理だって

ちゃんと出来る。

瀬名の目には、私は一体どんな風に映っていたのかと思うと、

あまり聞きたくないかも。



「悪い、悪い。今日子って、仕事がかなりできるだろ?

あの会社入って、大分経つしな。キャリアウーマンみたいな感じだな。

仕事以外は、やらないのかと思ってた」


「…それ、何気に酷いですよ」

そう言って落ち込む私を見て、瀬名はちょっと慌て始めた。


「いや、だからな・・・

見直したと言うか、惚れ直した・・・」


単純にも、その言葉に、パッと顔が明るくなっていく。

「…プッ。コロコロ表情変えすぎだ」

それを見た瀬名は吹き出しそう言った。


「せ、瀬名だって・・・会社と今とじゃ、雲泥の差ですよ。

無口で無表情な上司だったのに、今ここにいる瀬名は、

まるで正反対です」

負けじと、応戦する。
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