無口な上司の甘い罠
「…荻田隆盛」

「…隆盛?」

…なぜそこで隆盛の名前が出るのか?


「アイツといる時のお前は、いつも笑ってる」

「・・・そうですか?」

隆盛とは同期だし、言いたい事は何でも言う関係ではあるが、

その分喧嘩も絶えない。・・・まるで喧嘩友達と言う相手だ。



「アイツの前で笑ってる今日子の顔も、

アイツの前で怒ってる顔も・・・すべてオレのモノにしたいくらいだ」


そう言って瀬名は、ゴホッと咳払いを一つして、コーヒーを飲んでいた。


「…それって、あの・・・ヤキモチですか?」

「?!」

ズバリ言われた瀬名は、バツの悪そうな顔をしていた。

・・・ヤキモチ、妬くんだ。妬いてくれるんだ。


そう思うとスッゴク嬉しくなった。


「・・・何が可笑しい?」

もう一つ咳ばらいをした瀬名が、呟くように言った。


「なんだか嬉しくて…後、その寝癖も」

「?!…シャワー借りるぞ」

目を見開いた瀬名は、寝癖を探すしぐさをしながら立ち上がり、

逃げるようにバスルームへと進んでいく。
< 87 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop