無口な上司の甘い罠
「あの、タオルは脱衣所の引き出しの中に」

そう言った私の言葉に、瀬名は手だけあげて、バスルームの中に消えて行った。

私は可笑しくて、瀬名の行動が可愛くて、

ずっと笑いっぱなしだった。


それなのに・・・ふと。

その笑いが止まった。


…こんなに幸せでいいんだろうか?

あんな瀬名が。ずっと私の傍にいてくれるのだろうか?

瀬名を独り占めしてたら、罰が当たるんじゃないだろうかと、

言いようのない不安に駆られる自分がいた。


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・。


無言のまま片付けを済ませた私は、相変わらず無言のまま、

ソファーに座った。

そして見るわけでもないのに、テレビをつけ、画面を見つめる。


「・・・どうした?」

…私と同じ香りを身にまとった瀬名が、私を後ろから抱きしめた。

私は、瀬名を見上げ、胸がキュンとなる。

・・・大丈夫。・・・考えすぎだ。


「何でもないですよ…同じ香りがしますね」

そう言って微笑む。

「今日子と同じ物使おうかな、気に入った」

そう言って瀬名も微笑む。
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