無口な上司の甘い罠
・・・その後だ。

彼女が急にメガネをかけ始めたのは。

ただでさえ、近寄りがたい高嶺の花の彼女が、

周りの男から、更に遠ざかっていた。

…でも、オレにだけは、態度を変える事はしなかった。


「隆盛は、本音で付き合える」

2人で飲みに行った時、酔った今日子がポツリと言った言葉だった。

・・・そしてその後、彼女は失恋の痛みを話し、涙を流した。

・・・その涙さえも、綺麗だと思わせるその顔に、オレの中の何かが動き始めた。


・・・彼女をオレの手で幸せにしてやりたいと。


…そうは思っても、彼女の失恋の痛みを考えると、

すぐに付き合うとかそう言う感じじゃなかった。

だから、も少し傷がいえたら、その時、告白しようと決意した。



…それから数年。

やっと告白したのに。

今日子の心には、もう、違う誰かが住み始めていた。

それは決して俺ではない。

今日子の心の中にいるのは…。
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