無口な上司の甘い罠
4.もし君を手に入れられるなら
ここは会社のオフィスの中。

私は泣いている…そして部長は、私を後ろから抱きしめていた。

…なぜ、こんな事になったのかって?


それは、30分ほど前の事だった。


私は残業で、必死に仕事をこなしていた。

やっとの思いで仕事を終わらせ、帰り支度をしていると、

どこからか帰って来た部長が、私を見て、目を見開いた。


「お疲れ様です、まだ会社にいたんですね」

「・・・あぁ。専務に呼ばれて、専務室で話してたんだ」

…それ以上、何か言いたげなのに、黙ったまま私を見つめる部長に、

なぜか、言い様のない不安に駆られた。


「部長、何かあったんですか?」

その沈黙が耐えられなくて、私から声をかけた。


「今日子」

「…会社では、坂口って呼んでください」


「今日子」

「・・・なんですか?」


「北海道転勤が決まった」

「・・・」

あまりにも衝撃な言葉に、私は言葉を失った。

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