お見合い 宏太朗 Ver
「俺そろそろ行くわ」
「気ぃつけて」

え?!
これ言いに来ただけ?

足早で帰るのは多分、いや、絶対に関村梢が部屋にいるからだろう。


「本人も認めてるけど、俊が一番梢を想ってるんだよな」
「・・・俊って・・・童貞だったりすんのか?」

その質問に笑い始めた梓に、それは無いんだなとすぐにわかった。

「・・・でも彼女とかいた事はないんじゃねぇかな」
「・・・はぁ?」
「あいつの日常はずっと梢中心で回ってるんだよ。今も昔もずっとな。梢だってそれがわかってないわけじゃねぇけど、そうさせてんのは俊の方だ」
「・・・」
「今なんて梢は自分の家にいるより俊の家にいる時間のが長い。ありゃ半同棲だな」

だからこの前玲子さんは二人に関村梢のことを訊いたのか。

「・・・」
「俊は、冷めてるとか、何に対しても関心ごとがないとか言われるし、お前だって思うだろ?」
「・・・まぁ」
「でもそれは違くてさ。あいつの関心は全部梢に向いてる。だから他を見る暇っつうか、余裕があんま無いんだと思う。つうか本人がそれを望んでねぇ」


それは、なんだかしっくりくる説明で。

俊介をそこまでした関村梢への興味が一気に膨らんだ。

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