お見合い 宏太朗 Ver
「梢ちゃん、宏太郎君は梓と同じ大学だったんだよ」


今度はふと小父さんが俺の話を切り出す。
実際の見合いもこんな感じなんだろうか。

「お医者さん?」

少し驚いたような声色に、あいつらが本当に何も言って無いんだとわかった。
食事や会話で少しリラックスしてきたのか、さっきよりも表情が柔らくなっている気がする。

「今は研修医ですけど」

笑って言えば、彼女も笑みを返してくれる。

あぁ、良い笑顔をするな。

玲子さんが彼女の耳元で何かを囁くような動作をした後、彼女は目を丸く広げ、その手を止めた。
何か驚くような事を言われたのだろうか。

「梢さんは、司書をなさってるとか」

そう俺から切り出せば、彼女はナフキンで口を拭い、短く「はい」と小さく頷き答えた。

随分と柔らかなその印象に、司書という静かで微笑ましいイメージが彼女とマッチする気がした。
図書館という空間に彼女の存在は絵にもなるような感じもし、その様を見てみたいと思った。

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