三年目の私たち


リビングとダイニングが繋がったワンフロアを照らし出すのは、淡いオレンジ色の灯り。ダイニングテーブルの上に並べた夕食を、涙で滲んだ視界の中にぼんやりと浮かび上がらせている。



『今日は大切な日だから』



朝食を摂りながら、彼と話した光景が蘇った。



だから、私は定時退社した。
帰りにスーパーで食材を買って、いつもより頑張って夕食を作った。彼の好きな物を食べさせてあげたいと。



今日は早く帰ってくるって、あなたが言ったんじゃない。



てっきり彼からの電話は、
『駅に着いたから、もうすぐ帰る』という内容だと思っていた。



駅から家までは歩いて五分ほど。帰ってきた彼を出迎えてあげなくちゃと、急いで取った電話だったのに。全然当てが外れた。



電球色の照明は、ひとりで居ると寂しさを強調するばかり。リビングのソファにふたりで並んで座っているときとは、色味まで違っているようにさえ感じられてしまう。




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