三年目の私たち
馬鹿げてる。
たかが仕事で帰れないだけ。
今に始まったことじゃない。
私は大きく息を吐いた。もやもやした気持ちを私の中から追い出すように。
涙を拭うと、また大きな笑い声がテレビから溢れてきた。大袈裟に笑う司会者の声が、うっとおしく耳に障る。
握り締めていた携帯電話をテーブルの上に置いて、テレビのリモコンへと持ち替えて電源を切った。
ふと目に止まったのは、ソファの足元。小さなハート型のクッションが寝そべっている。照明のオレンジ色に決して負けない赤い色。
さっき彼からの電話を受けた際に、慌てて立ち上がって落としてしまったのだろう。
「バカ!」
拾い上げたクッションを力任せにソファに投げつけたけど、頼りない感触。すっきりするどころか、余計に苛立ちは募るだけ。
それでもお風呂に入ったら、少し気持ちは落ち着いた。冷蔵庫から取り出した缶ビールを一気に煽って、ベッドへと潜り込んだ。
テーブルの上に並べた夕食をそのままに。